な目は傍で観て居る人々を睥睨《へいげい》するかのやう。彼の西乃入の牧場を荒《あば》れ廻つて、丑松の父を突殺した程の悪牛では有るが、斯《か》うした潔《いさぎよ》い臨終の光景《ありさま》は、又た人々に哀憐《あはれみ》の情を催《おこ》させた。叔父も、丑松もすくなからず胸を打たれたのである。獣医はあちこちと廻つて歩き乍ら、種牛の皮を撮《つま》んで見たり、咽喉《のど》を押へて見たり、または角を叩《たゝ》いて見たりして、最後に尻尾を持上たかと思ふと、検査は最早《もう》其で済んだ。屠手は総懸りで寄つて群《たか》つて、『しツ/\』と声を揚げ乍ら、無理無体に屠殺の小屋の方へ種牛を引入れた。屠手の頭《かしら》は油断を見澄まして、素早く細引を投げ搦《から》む。※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と音して牛の身体が板敷の上へ横に成つたは、足と足とが引締められたからである。持主は茫然《ばうぜん》として立つた。丑松も考深い目付をして眺め沈んで居た。やがて、種牛の眉間《みけん》を目懸けて、一人の屠手が斧《をの》(一方に長さ四五寸の管《くだ》があつて、致命傷を与へるのは是《この》管である)を振翳《ふ
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