吾児に因果でも言含めるやうに掻口説《かきくど》いて、今更|別離《わかれ》を惜むといふ様子。
『それ、こゝに居なさるのが瀬川さんの子息《むすこ》さんだ。御詑《おわび》をしな。御詑をしな。われ(汝)のやうな畜生だつて、万更|霊魂《たましひ》の無えものでも有るめえ。まあ俺の言ふことを好く覚えて置いて、次の生《よ》には一層《もつと》気の利いたものに生れ変つて来い。』
斯《か》う言ひ聞かせて、軈《やが》て持主は牛の来歴を二人に語つた。現に今、多くを飼養して居るが、是《これ》に勝《まさ》る血統《ちすぢ》のものは一頭も無い。父牛は亜米利加《アメリカ》産、母牛は斯々《しか/″\》、悪い癖さへ無くば西乃入《にしのいり》牧場の名牛とも唄はれたであらうに、と言出して嘆息した。持主は又|附加《つけた》して、斯《この》種牛の肉の売代《うりしろ》を分けて、亡くなつた牧夫の追善に供へたいから、せめて其で仏の心を慰めて呉れといふことを話した。
其時獣医が入つて来て、鳥打帽を冠つた儘、人々に挨拶する。つゞいて、牛肉屋の亭主も入つて来たは、屠《つぶ》された後の肉を買取る為であらう。間も無く蓮太郎、弁護士の二人も、叔
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