て呉れたを言ひ継《つゞ》ける。心から老牧夫の最後を傷《いた》むといふ情合《じやうあひ》は、斯持主の顔色に表れるのであつた。『いえ。』と叔父は対手の言葉を遮《さへぎ》つて、『全く是方《こちら》の不注意《てぬかり》から起つた事なんで、貴方《あんた》を恨《うら》みる筋は些少《ちつと》もごはせん。』とそれを言へば、先方《さき》は猶々《なほ/\》痛み入る様子。『私はへえ、面目なくて、斯《か》うして貴方等《あんたがた》に合せる顔も無いのでやす――まあ畜生の為《し》たことだからせえて(せえては、しての訛《なまり》、農夫の間に用ゐられる)、御災難と思つて絶念《あきら》めて下さるやうに。』とかへす/″\言ふ。是処《こゝ》は上田の町はづれ、太郎山の麓に迫つて、新しく建てられた五棟ばかりの平屋。鋭い目付の犬は五六匹門外に集つて来て、頻《しきり》に二人の臭気《にほひ》を嗅いで見たり、低声に※[#「口+胡」、第4水準2−4−15]《うな》つたりして、やゝともすれば吠《ほ》え懸りさうな気勢《けはひ》を示すのであつた。
 持主に導かれて、二人は黒い門を入つた。内に庭を隔《へだ》てゝ、北は検査室、東が屠殺の小屋である
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