、奈何《どんな》に春待つ心の烈しさを思はせたらう。斯《か》うして眺《なが》め/\行く間にも、四人の眼に映る田舎《ゐなか》が四色で有つたのはをかしかつた。弁護士は小作人と地主との争闘《あらそひ》を、蓮太郎は労働者の苦痛《くるしみ》と慰藉《なぐさめ》とを、叔父は『えご』、『山牛蒡《やまごばう》』、『天王草《てんわうぐさ》』、又は『水沢瀉《みづおもだか》』等の雑草に苦しめられる耕作の経験から、収穫《とりいれ》に関係の深い土質の比較、さては上州地方の平野に住む農夫に比べて斯の山の上の人々の粗懶《なげやり》な習慣なぞを――流石《さすが》に三人の話は、生活といふことを離れなかつたが、同じ田舎を心に描いても、丑松のは若々しい思想《かんがへ》から割出して、働くばかりが田舎ではないと言つたやうな風に観察する。斯《か》ういふ思ひ/\の話に身が入つて、四人は疲労《つかれ》を忘れ乍ら上田の町へ入つた。
上田には弁護士の出張所も設けて有る。そこには蓮太郎の細君が根津から帰る夫を待受けて居たので。蓮太郎と弁護士とは、一寸立寄つて用事を済《す》ました上、また屠牛場で一緒に成るといふことにしよう、其種牛の最後をも見
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