いゝ》のかしらん、と丑松はそれを案じつゞけて、時々蓮太郎を待合せては、一緒に遅く歩くやうに為たが、まあ素人目《しろうとめ》で眺めたところでは格別|気息《いき》の切れるでも無いらしい。漸《やうや》く安心して、軈《やが》て話し/\行く連の二人の後姿は、と見ると其時は凡《およ》そ一町程も離れたらう。急に日があたつて、湿《しめ》つた道路も輝き初めた。温和《やはらか》に快暢《こゝろよ》い朝の光は小県《ちひさがた》の野に満ち溢《あふ》れて来た。
 あゝ、告白《うちあ》けるなら、今だ。
 丑松に言はせると、自分は決して一生の戒を破るのでは無い。是《これ》が若《も》し世間の人に話すといふ場合ででも有つたら、それこそ今迄の苦心も水の泡であらう。唯|斯人《このひと》だけに告白けるのだ。親兄弟に話すも同じことだ。一向差支が無い。斯う自分で自分に弁解《いひほど》いて見た。丑松も思慮の無い男では無し、彼程《あれほど》堅い父の言葉を忘れて了《しま》つて、好んで死地に陥るやうな、其様《そん》な愚《おろか》な真似を為《す》る積りは無かつたのである。
『隠せ。』
 といふ厳粛な声は、其時、心の底の方で聞えた。急に冷《つ
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