第拾章

       (一)

 いよ/\苦痛《くるしみ》の重荷を下す時が来た。
 丁度蓮太郎は弁護士と一緒に、上田を指して帰るといふので、丑松も同行の約束した。それは父を傷《きずつ》けた種牛が上田の屠牛場《とぎうば》へ送られる朝のこと。叔父も、丑松も其立会として出掛ける筈になつて居たので。昨夜の丑松の決心――あれを実行するには是上《このうへ》も無い好い機会《しほ》。復《ま》た逢《あ》はれるのは何時のことやら覚束《おぼつか》ない。どうかして叔父や弁護士の聞いて居ないところで――唯先輩と二人ぎりに成つた時に――斯う考へて、丑松は叔父と一緒に出掛ける仕度をしたのであつた。
 上田街道へ出ようとする角のところで、そこに待合せて居る二人と一緒になつた。丑松は叔父を弁護士に紹介し、それから蓮太郎にも紹介した。
『先生、これが私の叔父です。』
 と言はれて、叔父は百姓らしい大な手を擦《も》み乍《なが》ら、
『丑松の奴がいろ/\御世話様に成りますさうで――昨日《さくじつ》はまた御出下すつたさうでしたが、生憎《あいにく》と留守にいたしやして。』
 斯《か》ういふ挨拶をすると、蓮太郎は丁寧に亡《
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