分と同じ新平民の、其人だけに告白けるのに、危い、恐しいやうなことが何処にあらう。
『どうしても言はないのは虚偽《うそ》だ。』
 と丑松は心に羞《は》ぢたり悲んだりした。
 そればかりでは無い。勇み立つ青春の意気も亦《ま》た丑松の心に強い刺激を与へた。譬《たと》へば、丑松は雪霜の下に萌《も》える若草である。春待つ心は有ながらも、猜疑《うたがひ》と恐怖《おそれ》とに閉ぢられて了《しま》つて、内部《なか》の生命《いのち》は発達《のび》ることが出来なかつた。あゝ、雪霜が日にあたつて、溶けるといふに、何の不思議があらう。青年が敬慕の情を心ゆく先輩の前に捧げて、活きて進むといふに、何の不思議があらう。見れば見るほど、聞けば聞くほど、丑松は蓮太郎の感化を享《う》けて、精神の自由を慕はずには居られなかつたのである。言ふべし、言ふべし、それが自分の進む道路《みち》では有るまいか。斯う若々しい生命が丑松を励ますのであつた。
『よし、明日は先生に逢つて、何もかも打開《ぶちま》けて了はう。』
 と決心して、姫子沢の家をさして急いだ。
 其晩はお妻の父親《おやぢ》がやつて来て、遅くまで炉辺《ろばた》で話した。叔
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