のに何の不思議が有る、親子の間柄で選挙の時なぞに助けて貰ふのは至当《あたりまへ》ぢやないか――斯う言ふかも知れない。それならそれで可《いゝ》さ。階級を打破して迄《まで》も、気に入つた女を貰ふ位の心意気が有るなら、又面白い。何故そんなら、狐鼠々々《こそ/\》と祝言《しうげん》なぞを為るんだらう。何故そんなら、隠れてやつて来て、また隠れて行くやうな、男らしくない真似を為るんだらう。苟《いやし》くも君、堂々たる代議士の候補者だ。天下の政治を料理するなどと長広舌を振ひ乍ら、其人の生涯を見れば奈何《どう》だらう。誰やらの言草では無いが、全然《まるで》紳士の面を冠つた小人の遣方だ――情ないぢやないか。成程《なるほど》世間には、金に成ることなら何でもやる、買手が有るなら自分の一生でも売る、斯《か》ういふ量見の人はいくらも有るさ。しかし、彼男のは、売つて置いて知らん顔をして居よう、といふのだから酷《はなはだ》しい。まあ、君、僕等の側に立つて考へて見て呉れたまへ――是程《これほど》新平民といふものを侮辱した話は無からう。』
 暫時《しばらく》二人は言葉を交さないで食つた。軈てまた蓮太郎は感慨に堪へないと
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