はず叔母も涙が出た。叔父も一緒に成つて笑つた。其時叔母が汲んで呉れた渋茶の味の甘かつたことは。款待振《もてなしぶり》の田舎饅頭《ゐなかまんぢゆう》、その黒砂糖の餡《あん》の食ひ慣れたのも、可懐《なつか》しい少年時代を思出させる。故郷に帰つたといふ心地《こゝろもち》は、何よりも深く斯ういふ場合に、丑松の胸を衝《つ》いて湧上《わきあが》るのであつた。
『どれ、それでは行つて見て来ます。』
 と言つて家を出る。叔父も直ぐに随いて出た。何か用事ありげに呼留めたので、丑松は行かうとして振返つて見ると、霜葉《しもば》の落ちた柿の樹の下のところで、叔父は声を低くして
『他事《ほか》ぢやねえが、猪子で俺は思出した。以前《もと》師範校の先生で猪子といふ人が有つた。今日の御客様は彼人《あのひと》とは違ふか。』
『それですよ、その猪子先生ですよ。』と丑松は叔父の顔を眺め乍ら答へる。
『むゝ、左様《さう》かい、彼人かい。』と叔父は周囲《あたり》を眺め廻して、やがて一寸親指を出して見せて、『彼人は是《これ》だつて言ふぢやねえか――気を注《つ》けろよ。』
『はゝゝゝゝ。』と丑松は快活らしく笑つて、『叔父さん、其様
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