弾じて、銭を乞ふやうな卑《いや》しい芸人の一組もあつた。丑松は眺め入つた。眺め入り乍ら、自分の身の上と思ひ比べた。奈何《どんな》に丑松は今の境涯の遣瀬《やるせ》なさを考へて、自在に漂泊する旅人の群を羨んだらう。
飯山を離れて行けば行く程、次第に丑松は自由な天地へ出て来たやうな心地《こゝろもち》がした。北国街道の灰色な土を踏んで、花やかな日の光を浴び乍ら、時には岡に上り時には桑畠の間を歩み、時にはまた街道の両側に並ぶ町々を通過ぎて、汗も流れ口も乾き、足袋《たび》も脚絆も塵埃《ほこり》に汚《まみ》れて白く成つた頃は、反《かへ》つて少許《すこし》蘇生の思に帰つたのである。路傍《みちばた》の柿の樹は枝も撓《たわ》むばかりに黄な珠を見せ、粟は穂を垂れ、豆は莢《さや》に満ち、既に刈取つた田畠には浅々と麦の萌《も》え初めたところもあつた。遠近《をちこち》に聞える農夫の歌、鳥の声――あゝ、山家でいふ『小六月』だ。其日は高社山一帯の山脈も面白く容《かたち》を顕《あらは》して、山と山との間の深い谷蔭には、青々と炭焼の煙の立登るのも見えた。
蟹沢《かにざは》の出はづれで、当世風の紳士を乗せた一台の人力車
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