》の霜の烈しさを思はせるやうな晩で、日中とは違つて、めつきり寒かつた。丑松が見廻りの為に出て行つた後、まだ敬之進は火鉢の傍に齧《かじ》り付いて、銀之助を相手に掻口説《かきくど》いて居た。
 軈《やが》て二十分ばかり経つて丑松は帰つて来た。手提洋燈《てさげランプ》を吹消して、急いで火鉢の側《わき》に倚添ひ乍ら、『いや、もう屋外《そと》は寒いの寒くないのツて、手も何も凍《かじか》んで了ふ――今夜のやうに酷烈《きび》しいことは今歳《ことし》になつて始めてだ。どうだ、君、是通りだ。』と丑松は氷のやうに成つた手を出して、銀之助に触つた。『まあ、何といふ冷い手だらう。』斯《か》う言つて、自分の手を引込まして、銀之助は不思議さうに丑松の顔を眺めたのである。
『顔色が悪いねえ、君は――奈何《どう》かしやしないか。』
 と思はず其を口に出した。敬之進も同じやうに不審を打つて、
『我輩も今、其を言はうかと思つて居たところさ。』
 丑松は何か思出したやうに慄へて、話さうか、話すまいか、と暫時《しばらく》躊躇《ちうちよ》する様子にも見えたが、あまり二人が熱心に自分の顔を熟視《みまも》るので、つい/\打明けずに
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