瀬川君なぞは奈何《どう》いふことを考へて居るんでせう。』
『奈何いふことゝは?』と文平は不思議さうに。
『まあ、近頃の瀬川君の様子を見るのに、非常に沈んで居る――何か斯う深く考へて居る――新しい時代といふものは彼様《あゝ》物を考へさせるんでせうか。どうも我輩には不思議でならない。』
『しかし、瀬川君の考へて居るのは、何か別の事でせう――今、先生の仰つたやうな、其様《そん》な事ぢや無いでせう。』
『左様《さう》なると、猶々《なほ/\》我輩には解釈が付かなくなる。どうも我輩の時代に比べると、瀬川君なぞの考へて居ることは全く違ふやうだ。我輩の面白いと思ふことを、瀬川君なぞは一向詰らないやうな顔してる。我輩の詰らないと思ふことを、反つて瀬川君なぞは非常に面白がつてる。畢竟《つまり》一緒に事業《しごと》が出来ないといふは、時代が違ふからでせうか――新しい時代の人と、吾儕《われ/\》とは、其様《そんな》に思想《かんがへ》が合はないものなんでせうか。』
『ですけれど、私なぞは左様《さう》思ひません。』
『そこが君の頼母《たのも》しいところさ。何卒《どうか》、君、彼様《あゝ》いふ悪い風潮に染まないやう
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