。』と文平は返事に困つた。
『生徒を御覧なさい――瀬川先生、瀬川先生と言つて、瀬川君ばかり大騒ぎしてる。彼様《あんな》に大騒ぎするのは、瀬川君の方で生徒の機嫌を取るからでせう? 生徒の機嫌を取るといふのは、何か其処に訳があるからでせう? 勝野君、まあ君は奈何《どう》思ひます。』
『今の御話は私に克《よ》く解りません。』
『では、君、斯う言つたら――これはまあ是限《これぎ》りの御話なんですがね、必定《きつと》瀬川君は斯の学校を取らうといふ野心があるに相違《ちがひ》ないんです。』
『はゝゝゝゝ、まさか其程にも思つて居ないでせう。』と笑つて、文平は校長の顔を熟視《みまも》つた。
『でせうか?』と校長は疑深く、『思つて居ないでせうか?』
『だつて、未《ま》だ其様《そん》なことを考へるやうな年齢《とし》ぢや有ません――瀬川君にしろ、土屋君にしろ、未だ若いんですもの。』
 この『若いんですもの』が校長を嘆息させた。庭で遊ぶ庭球《テニス》の球の音はおもしろく窓の玻璃《ガラス》に響いた。また一勝負始まつたらしい。思はず文平は聞耳を立てた。その文平の若々しい顔付を眺めると、校長は更に嘆息して、
『一体、
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