ら庭へ降りて、独りで考えを纏《まと》めるために無花果《いちじく》の樹《き》の下へ行った。そこから自分の部屋へ引返して来て民助と一緒に朝の茶を飲みながら話した。学校へ通う子供等を送り出した頃から、民助の話は復《ま》た「懺悔《ざんげ》の一件」に繋《つな》がって起って来たが、でも前の晩に比べると余程打解けた調子で話すように成った。
「一体、どうしてああいうことを発表する気に成ったのかね」と民助は言って、やや声を低くして、「義雄の追求の仕方があまり苛《きび》しかったんだろうッて、俺は台湾の方に居てお秋(嫂《あによめ》の名)と二人でその噂《うわさ》をしていたよ――」
 民助は思い当ることでもあるように言った。それを聞いた岸本の胸には、節子と二人で暗い暗い月日を送った時のことが浮んで来た。
「それもあります」と岸本は答えた。「しかし、そればかりで投出したという訳じゃありません。まあ、いろいろな心の経験が重なり重なってああいうところへ出て行ったんです。その証拠には私は義雄さんのために尽すことを決して嫌《いや》だとは思っていません。そりゃどうかということがあれば、今でも自分の力に出来るだけのことは為《す》るつもりでいます。唯《ただ》私は貴方《あなた》がたと同じようにそれを為たいと思うんです。それだけです」
「そこでだ、節ちゃんは台湾へ連れて行くことに決ったしと――」
 と民助は言いかけながら、岸本の見ている前で座を起《た》って、帯を締め直した。この兄は短い上京の日取の間に自分の用事も達《た》さなければ成らずと言ったように坐り直して、やがて四方八方を円《まる》く治めて行きたいという口調で、更に言葉を継いで、
「俺もこうして出て来た以上は、このままにして置いて行く訳にはいかない。兄弟が仲違《なかたが》いをしているなんてことは不可《いけない》。どうしても貴様と義雄とは元通りにして置いて行かないと、俺の役目が済まん」
「それは少し困ります」と岸本は驚いて、兄の言葉を遮《さえぎ》った。「私の方からは勘当を受けようと言い出してあるくらいですし、当分はこのままにして置いて頂きたいと思います」
「それは不可――何処《どこ》かで、貴様と義雄とを逢わせて、俺が仲直りをさせて置いて行く――このままなんてことは、どうしても不可――」
 こう言って、民助が聞入れそうにもないので、岸本は義雄の方から来ている絶
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