ことなどを綜《あつ》め合せて見ると、そこに岸本は義雄兄の意嚮《いこう》を読んだ。兄弟の縁を絶ってまでも節子に岸本のことを思い切らせようとした義雄兄が、反対に節子の告白を聞いて、黙ってそのままにして置く気遣《きづか》いもなかった。けれども、岸本は今々どうすることも出来ないでいるものの本当の意味の解決を彼女と自分との告白の結果に求めようとした。所詮《しょせん》彼女は一足飛びに自身の択《えら》んだ方針へ進んで行かれる人ではなかった。
「ああそうだ――いずれ節ちゃんは台湾へでもやられるように成る――」
 岸本は独《ひと》りでそれを言って見て、一方には彼女を可哀そうに思い、一方にはそれを寧《むし》ろ彼女のために可《い》いと考えた。岸本は確かに彼女の前途に進路が開けかかって来たことを想って見た。すくなくとも、彼女が今の境涯から動いて出られるというだけでも。
 見ることの出来ないように成った節子を思いやりながら、岸本はよく子供を連れて夕方から町の空へ出た。往来で行き逢う人々の中にも、彼は節子と同じような年頃の婦人を見かけて、それらの知らない人の通り過ぎる影に彼女を思い比べることがあった。そういう場合の彼は後姿なぞの節子に似た人をどうかすると見かけるまでであって、髪のかたち一つ彼女と同じものに遭遇《でっくわ》すということさえ殆《ほとん》ど無かった。節子の髪の形は矢張《やっぱり》彼女一人の特有なものであった。それに似よりのものを彼女の身内の人達に求めると、一番彼女に近い筈《はず》の亡《な》くなった嫂を想い出さないで、反って祖母さんの方を思い出すのが岸本の常であった。祖母さんはもう好い年齢《とし》で、頭《つむり》の上あたりは禿《は》げ、髪もあらかた抜け落ちてしまったが、未だそれでも後の方には房々《ふさふさ》とした毛の残りを見せている人だ。それを集めれば、どうにか老人《としより》らしい髪ぐらいは結える人だ。この特色が節子に伝わって、後から見た彼女の髪のかたちを特に岸本は好ましく思っていた。髪ばかりではない、女らしい耳でも、額つきでも、彼女は身内のものの誰よりも祖母さんに似ていた。博多《はかた》の帯のことから話が出て、節子は女としての自分を岸本に言って見せたこともあった。彼女に言わせるとすらりとしたきゃしゃな体格にでも生れついて来た人でなければ、博多の帯なぞというものは似合わない。自分のよ
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