なければ食えないかと思うと、御気の毒な商売だ』ッて、そう言って下さいッて――」
輝子を通して聞くこの兄の言葉をも岸本はそのまま受けて置いた。それよりも岸本は祖母《おばあ》さんのことを知りたかった。
「祖母さんにも話してくれたかね――」と彼が訊《き》いた。
「それですよ」と輝子はすこし肩を動《ゆす》るようにして、「祖母さんに黙って置いては悪かろうと思いまして、私から節ちゃんのことを話しました。どうして祖母さんは、悟でも開いたような顔をして、そんな話を聞いてもそれは平常《いつも》の通りでしたよ……叔父さんの御手紙は私も拝見しましたがね、何にしても可哀そうなものは節ちゃんです。子供があると、なかなか忘れられないものだそうです」
こう言って輝子は笑った。彼女はもうこんな話をしたくないという風で、取返しのつかない叔父の懺悔から親戚同志の楽しい平和が破られた事を哀《かな》しむように見えた。こうした場合の輝子は言うだけのことを言っても、その後から直に彼女の涙もろい性質を見せた。
「どれ、御用はこれで済みました――君ちゃんも姉さんの側へいらっしゃい」
と輝子は次の部屋に遊んでいる君子を呼んで、大人同志の気まずい心持を子供の方へ避けた。
独りになってから岸本は節子に宛てて誰に見せても差支《さしつかえ》の無い手紙を送った。それには義雄兄の方へ書面を出して自分の立場を明かにしたこと、しばらく御無沙汰《ごぶさた》すること、祖母さんはじめ目上の人達へ奉仕の心を励んでくれということなぞを簡単に書いて送った。その翌々日、彼は節子からの返事を受取って見て、父の心はとけない、しかし自分は漸く少し楽な心持に成った、ほんとに勉強したいような気も起って来たから安心してくれという意味の言葉を見つけた。その返事の中には、「お父さんのところへ最初の御手紙の参りました時にも、私には見せませんで、自分で何かお書きになって、台湾の伯父さんの許《ところ》へ出しました」ともしてあった。「布施さんから復た葉書が参りました。先日の御手紙は拝見した、その事につき御面談申上げたいことがあるから近日お伺いすると言って参りました――好い加減にして下されば好いのにね」ともしてあった。それを見て岸本は、義雄兄や輝子の間には未だ節子の縁談の続いていることを知った。
百十九
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「噫《ああ》、
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