盾浴|parsley skirts the hawthorn−hedge.
 'Tis visible silence, still as the hour−glass.[#底本ではピリオド(.)なし]

 Deep in the sun−searched growths the dragon−fly
 Hangs like a blue thread loosened from the sky:――
 So this wing'd hour is dropt to us from above.
 Oh ! clasp we to our hearts, for deathless dower
 This close companioned inarticulate hour
 When twofold silence was the song of love."

右訳歌
「緑の草の中にしも腕《かひな》を君が擲《な》げやれば
 を指の尖《さき》のほの透《す》きてあからむ花と擬《まが》ふかな、
 さても微笑《ほほゑ》むやさ眼《まみ》や。散りては更に寄せ来《く》なる
 雲の波だつ空の下に照りては陰《かげ》る牧の原。
 二人|巣籠《すごも》るこのほとり眼路《めぢ》のかぎりはおしなべて
 黄金《こがね》の花の毛莨《きんぽうげ》、野末の線《すぢ》は白銀《しろがね》に、
 いぬ芹《ぜり》生《お》ふる山※[#「木+査」、第3水準1−85−84]子《さんざし》の垣根の端《はし》に連なりぬ。
 げに静けさの眼にも見えて、漏刻《ろうごく》の如《ごと》しめやかに。

 日影も忍ぶ草がくれ、蜻蛉《あきつ》はひとりみ空より
 解けにし藍《あゐ》の一すぢの糸かとばかりかゝりたる、
 『時』の翅《つばさ》もさながらに二人の上に休《やす》らひぬ。
 噫《ああ》、うち寄せむ、胸と胸、これや変らぬ珍宝《うづたから》、
 美《うま》し契のこまやかにたとしへもなきこの刻《きざみ》、
 二重《ふたへ》に合へる静けさぞ君と我との愛の歌」
[#ここで字下げ終わり]

 生命《いのち》の家。岸本の胸に浮ぶは曾《かつ》て中野の友人によって訳されたこの歌であった。彼は六畳の部屋の片隅に子供の着物なぞを入れた古い箪笥《たんす》の前に居て、そこに足を投出しながら、しばらく障子の開いたところからうち湿った秋の空を眺めていた。
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