渇《きかつ》を癒《いや》すことが出来ない。
空は煙か雨かと思うほどで、傘さして通る人や、濡れて行く馬などの姿が眼につく。単調な軒の玉水の音も楽しい。
堅く縮こまっていた私の身体もいくらか延び延びとして来た。私は言い難き快感を覚えた。庭に行って見ると、汚《よご》れた雪の上に降りそそぐ音がする。屋外《そと》へ出て見ると、残った雪が雨のために溶けて、暗い色の土があらわれている。田畠も漸《ようや》く冬の眠から覚めかけたように、砂まじりの土の顔を見せる。黄ばんだ竹の林、まだ枯々とした柿、李《すもも》、その他眼にある木立の幹も枝も、皆な雨に濡れて、黒々と穢《きたな》い寝恍顔《ねぼけがお》をしていない物は無い。
流の音、雀の声も何となく陽気に聞えて来る。桑畠の桑の根元までも濡らすような雨だ。この泥濘《ぬかるみ》と雪解《ゆきげ》と冬の瓦解《がかい》の中で、うれしいものは少し延びた柳の枝だ。その枝を通して、夕方には黄ばんだ灰色の南の空を望んだ。
夜に入って、淋《さび》しく暖い雨垂の音を聞いていると、何となく春の近づくことを思わせる。
北山の狼《おおかみ》、その他
生徒と一緒に歩い
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