も有りましたが、皆な死んで了った……今の辰は貰《もら》い子でサ……どうでしょう、婆さんが私の留守に、家の物を皆な運んで了う。そりゃ男と女の間ですから、大抵のことは納まりますサ……納まりますが……盗みばかりは駄目です。今ここで婆さんを入れる、あの隠居も神信心だなんて言いながら、婆さんの溜《た》めたのを欲しいからと人が言う。それが厭《いや》でサ。婆さんが来ても、直《すぐ》に盗みの話に成ると納まらないや。モメて仕様が無い。ホラ、あの話ねえ――段々|卜《うらな》ってみると、盗人が出て来ましたぜ。可恐《おそろ》しいもんだねえ」
 隠居の話し振には実に気の面白い、小作人仲間の物識と立てられるだけのことがあった。地主と隠居の間には、台所の方に居る同居人母子のことに就いてこんな話も出た。
「へえ、あれが娘ですか」
「子も有るんでさあね。可哀《かわい》そうだから置いて遣《や》ろうと言うんですよ。妙に世間では取る……私だって今年六十七です……この年になって、あんな女を入れたなんて言われちゃ、つまらない――そこが口惜《くや》しいサ」
「幾歳《いくつ》に成ったって気は同じよ」
 御蔭で私もめったに来たことのな
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