斗五升よ」
「四斗……」と地主は口籠《くちごも》る。
「四斗五升じゃないや。四斗七升サ。そうだ――」と復た隠居が言った。
「四斗七升?」と地主は隠居の顔を見た。
「ああ四斗七升か」と云い捨てて、辰さんは庭の方へ出て行った。
 私達は炬燵の周囲《まわり》に集った。隠居は古い炬燵板を取出して、それを蒲団《ふとん》の上に載せ、大丼《おおどんぶり》に菎蒻《こんにゃく》と油揚の煮付を盛って出した。小皿には唐辛《とうがらし》の袋をも添えて出した。古い布で盃《さかずき》を拭《ふ》いて、酒は湯沸に入れて勧めてくれた。
「冷《れい》ですよ。燗《かん》ではありませんよ――定屋様はこの方で被入《いら》っらしゃるから」
 こう隠居も気軽な調子で言った。地主は煙管《きせる》を炬燵板の間に差込み、冷酒《ひやざけ》を舐《な》め舐め隠居の顔を眺めて、
「こういう時には婆さんが居ると、都合が好いなア」
 地主の顔には始めて微《かす》かな笑《えみ》が上った。隠居は款待顔《もてなしがお》に、
「婆さんに別れてからねえ、今年で二十五年に成りますよ」
「もう好加減に家へ入れるが可いや」
「まあ聞いて下さい。婆さんには子供が七人
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