《あんばい》だ」と復た辰さんが言っていた。
細帯締た娘は茶を入れて私達の方へ持って来てくれた。炬燵にあたっていた無口な女は、ぷいと台所の方へ行った。
隠居は小声に成って、
「私も唯《たった》一人ですし、平常《ふだん》は誰も訪ねて来るものが無いんです。年寄ですからねえ……ですから置いてくれというので、ああいうものを引受けて同居さしたところが忰が不服で黙ってあんなものを入れたって言いますのさ」
「飯なぞは炊《た》いてくれるんですか」と私が聞いた。
「それですよ、世間の人はそう思う。ところが私は炊いて貰わない。どうしてそんな事をしようものなら皆な食われて了う……そこは私もなかなか狡《こす》いや。だけれども世間の人はそう言わない。そこがねえ辛《つら》いと言うもんです」
古い洋傘《こうもり》の毛繻子《けじゅす》の今は炬燵掛と化けたのを叩いて、隠居は掻口説《かきくど》いた。この人の老後の楽みは、三世相《さんぜそう》に基づいて、隣近所の農夫等が吉凶を卜《うらな》うことであった。六三の呪禁《まじない》と言って、身体の痛みを癒《なお》す祈祷《きとう》なぞもする。近所での物識《ものしり》と言われてい
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