言っても実際三百坪は無い、三百坪なくて取立てるのはその割で取る、地主と半々に分けるところは異数な位だ。そこで小作人の苦情が起る。無智な小作人がまた地主に対する態度は、種々なところで人の知らない復讐《ふくしゅう》をする。仮令《たとえ》ば俵の中へ石を入れて目方を重くし、俵へ霧を吹いて目をつけ、又は稲の穂を顧みないで藁を大事にし、その他種々な悪戯《いたずら》をして地主を苦める。こんなことをしたところで、結局「三月四月は食いじまい」だ。尤も、そのうちには麦も取れる。
「しかし私の時には定屋《じょうや》様(地主)がお出《いで》なさると、必《きっ》と一升買って、何がなくとも香の物で一杯上げるという風でした。今年は悴《せがれ》に任しときましたから、彼奴《あいつ》はまたどんな風にするか……私の時には昔からそうでした」
こう隠居は私に話して笑った。
そのうちに家の外では「定屋さんになア、来て御くんなんしょって、早く行って来てくれや」という辰さんの声がする。日の光は急に戸口より射し入り、暗い南の明窓《あかりまど》も明るくなった。「ああ、日が射して来た、先刻《さっき》までは雪模様でしたが、こりゃ好い塩梅
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