な》の欄干《おばしま》に
かゝるゆふべの春の雨
さばかり高き人の世の
耀《かがや》くさまを目にも見て
ときめきたまふさま/″\の
ひとりのころもの香《か》をかげり
きらめき初《そ》むる暁星《あかぼし》の
あしたの空に動くごと
あたりの光きゆるまで
さかえの人のさまも見き
天《あま》つみそらを渡る日の
影かたぶけるごとくにて
名《な》の夕暮に消えて行く
秀《ひい》でし人の末路《はて》も見き
春しづかなる御園生《みそのふ》の
花に隠れて人を哭《な》き
秋のひかりの窓に倚《よ》り
夕雲とほき友を恋ふ
ひとりの姉をうしなひて
大宮内の門《かど》を出《い》で
けふ江戸川に来て見れば
秋はさみしきながめかな
桜の霜葉《しもは》黄に落ちて
ゆきてかへらぬ江戸川や
流れゆく水静かにて
あゆみは遅きわがおもひ
おのれも知らず世を経《ふ》れば
若き命《いのち》に堪へかねて
岸のほとりの草を藉《し》き
微笑《ほほゑ》みて泣く吾身かな
おきぬ
みそらをかける猛鷲《あらわし》の
人の処女《をとめ》の身に落ちて
花の姿に宿《やど》かれば
風雨《あらし》に渇《かわ》き雲に饑《う》ゑ
天翅《あま
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