秋の百葉《ももは》を落すとき
人は利剣《つるぎ》を振《ふる》へども
げにかぞふればかぎりあり
舌は時世《ときよ》をのゝしるも
声はたちまち滅ぶめり
高くも烈《はげ》し野も山も
息吹《いぶき》まどはす秋風よ
世をかれ/″\となすまでは
吹きも休《や》むべきけはひなし
あゝうらさびし天地《あめつち》の
壺《つぼ》の中《うち》なる秋の日や
落葉と共に飄《ひるがへ》る
風の行衛《ゆくへ》を誰か知る
雲のゆくへ
庭にたちいでたゞひとり
秋海棠《しゅうかいどう》の花を分け
空ながむれば行く雲の
更《さら》に秘密を闡《ひら》くかな
小詩二首
一
ゆふぐれしづかに
ゆめみんとて
よのわづらひより
しばしのがる
きみよりほかには
しるものなき
花かげにゆきて
こひを泣きぬ
すぎこしゆめぢを
おもひみるに
こひこそつみなれ
つみこそこひ
いのりもつとめも
このつみゆゑ
たのしきそのへと
われはゆかじ
なつかしき君と
てをたづさへ
くらき冥府《よみ》までも
かけりゆか
前へ
次へ
全53ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング