やみを出《い》でては光ある
空とならばやあけぼのの
空とならばや
春の光を彩《いろど》れる
水とならばやあけぼのの
水とならばや
鳩《はと》に履《ふ》まれてやはらかき
草とならばやあけぼのの
草とならばや
三 春は来ぬ
春はきぬ
春はきぬ
初音《はつね》やさしきうぐひすよ
こぞに別離《わかれ》を告げよかし
谷間に残る白雪よ
葬りかくせ去歳《こぞ》の冬
春はきぬ
春はきぬ
さみしくさむくことばなく
まづしくくらくひかりなく
みにくゝおもくちからなく
かなしき冬よ行きねかし
春はきぬ
春はきぬ
浅みどりなる新草《にひぐさ》よ
とほき野面《のもせ》を画《ゑが》けかし
さきては紅《あか》き春花《はるばな》よ
樹々《きぎ》の梢《こずゑ》を染めよかし
春はきぬ
春はきぬ
霞《かすみ》よ雲よ動《ゆる》ぎいで
氷れる空をあたゝめよ
花の香《か》おくる春風よ
眠れる山を吹きさませ
春はきぬ
春はきぬ
春をよせくる朝汐《あさじほ》よ
蘆《あし》の枯葉《かれは》を洗ひ去れ
霞に酔へる雛鶴《ひなづる》よ
若きあしたの空に飛べ
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