朝顔狂《あさがおきちがい》ですから、小諸へ来るが早いか直ぐに庭中朝顔鉢にしちまいました――この棚は音さんが来て造ってくれましたよ――まあこんな好い棚を――」
と高瀬に話した。奥さんはユックリ朝顔を眺められないという風に言ったが、夫の好きな花に趣味も持たない人では無いらしかった。彼女は学士が植えて楽む種々《いろいろ》な朝顔の変り種の名前などまでもよく暗記《そら》んじていた。
「高瀬さんに一つ、私の大事な朝顔を見て頂きましょうか」
と学士が言って、数ある素焼の鉢の中から短く仕立てた「手長」を取出した。学士はそれを庭に向いた縁側のところへ持って行った。鉢を中にして、高瀬に腰掛けさせ、自分でも腰掛けた。
奥さんは子供衆の方にまで気を配りながら、
「これ、繁、塾の先生が被入《いら》しったに御辞儀しないか――勇、お前はまた何だッてそんなところに立っているんだねえ――真実《ほんとう》に、高瀬さん、私も年を取りましたら、気ぜわしくなって困りますよ――」
奥さんの小言の飛沫《とばしり》は年長《うえ》のお嬢さんにまで飛んで行った。お嬢さんは初々《ういうい》しい頬を紅《あから》めて、客や父親のところ
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