》に飾《かざ》る竹《たけ》は、あれは外國《ぐわいこく》の田舍家《ゐなかや》で飾《かざ》るといふクリスマスの木《き》にも比《くら》べて見《み》たいやうなものです。墨《すみ》や紅《べに》を流《なが》して染《そ》めた色紙《いろがみ》、または赤《あか》や黄《き》や青《あを》の色紙《いろがみ》を短册《たんざく》の形《かたち》に切《き》つて、あの青《あを》い竹《たけ》の葉《は》の間《あひだ》に釣《つ》つたのは、子供心《こどもごゝろ》にも優《やさ》しく思《おも》はれるものです。

   三七 巴且杏《はたんきやう》

巴且杏《はたんきやう》の生《な》る時分《じぶん》には、お家《うち》の裏《うら》のお稻荷《いなり》さまの横手《よこて》にある古《ふる》い木《き》にも、あの實《み》が密集《かたま》つて生《な》りました。父《とう》さんは自分《じぶん》の子供《こども》の時分《じぶん》と、あの巴且杏《はたんきやう》の生《な》る時分《じぶん》とを、別々《べつ/\》にして思《おも》ひ出《だ》せないくらゐです。巴且杏《はたんきやう》は李《すもゝ》より大《おほ》きく、味《あぢ》も李《すもゝ》のやうに酸《す》くはありませ
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