とまた岩《いは》が父《とう》さんに指《さ》して見《み》せました。その水晶《すゐしやう》は千本濕地《せんぼんしめぢ》といふ茸《きのこ》のかたまつて生《は》えたやうに、枝《えだ》に枝《えだ》がさしたやうになつて居《ゐ》まして、その枝《えだ》の一つ一つが、みんな水晶《すゐしやう》の形《かたち》をして居《ゐ》ました。
『こんなところから水晶《すゐしやう》が出《で》るんですか。』
と父《とう》さんが聞《き》きましたら、
『えゝ[#「ゝ」は底本では「う」]、さうです。水晶《すゐしやう》はみんな斯《か》うして生《うま》れて來《き》ます。人《ひと》は遠《とほ》いところにばかり眼《め》をつけて、足許《あしもと》に落《お》ちて居《ゐ》る寶石《ほうせき》を知《し》らずに居《ゐ》ますよ。さういふお前《まへ》さんは、この山《やま》は初《はじ》めてゞすか。よく來《き》て下《くだ》さいました。山《やま》の土産《みやげ》に、あそこに落《お》ちて居《ゐ》る美《うつく》しい水晶《すゐしやう》でも一つ拾《ひろ》つて行《い》つて下《くだ》さい。』
斯《か》うその岩《いは》が答《こた》へました。
父《とう》さんはそこいらを探《
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