《みづ》も汲《く》めます。父《とう》さんは表庭《おもてには》の梨《なし》の木《き》や椿《つばき》の木《き》の下《した》あたりへ小《ちひ》さな川《かは》のかたちをこしらへました。寄《よ》せ集《あつ》めた砂《すな》や土《つち》を二列《ふたれつ》に盛《も》りまして、その中《なか》へ水《みづ》を流《なが》しては遊《あそ》びました。竹《たけ》の子《こ》の手桶《てをけ》で提《さ》げて行《い》つた水《みづ》がその小《ちひ》さな川《かは》を流《なが》れるのを樂《たのし》みました。
麥畠《むぎばたけ》に熟《じゆく》した麥《むぎ》は、父《とう》さんに穗先《ほさき》の方《はう》の細《ほそ》い麥藁《むぎわら》と、胴中《どうなか》の方《はう》の太《ふと》い麥藁《むぎわら》とを呉《く》れました。
『是《これ》をどうするんですか。黄色《きいろ》い麥藁《むぎわら》でなけりや不可《いけない》んですか。』
と父《とう》さんが聞《き》きましたら、麥《むぎ》の言《い》ふには、
『ナニ、青《あを》いんでもかまひませんが、なるなら黄色《きいろ》い方《はう》がいゝ。麥《むぎ》は熟《じゆく》するほど丈夫《ぢやうぶ》ですからね。この細
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