、嬉《うれ》しく思《おも》ひました。
南瓜《たうなす》も父《とう》さんに、蔕《へた》を呉《く》れました。
『御覽《ごらん》、私《わたし》の蔕《へた》の堅《かた》いこと。まるで竹《たけ》の根《ね》のやうです。これをお前《まへ》さんの兄《にい》さんのところへ持《も》つて行《い》つて、この裏《うら》の平《たひ》らなところへ何《なに》か彫《ほ》つてお貰《もら》ひなさい。それが出來《でき》たら、紙《かみ》の上《うへ》へ押《お》して御覽《ごらん》なさい。面白《おもしろ》い印行《いんぎやう》が出來《でき》ますよ。』
と南瓜《たうなす》が教《をし》へて呉《く》れました。
裏《うら》の竹籔《たけやぶ》の竹《たけ》は父《とう》さんに竹《たけ》の子《こ》を呉《く》れました。それで竹《たけ》の子《こ》の手桶《てをけ》を造《つく》れ、と言《い》つて呉れ《く》ました。
『こいつも、おまけだ。』
と細《ほそ》く竹《たけ》の割《わ》つたのまで呉《く》れてよこしました。その細《ほそ》い竹《たけ》を削《けづ》りまして、竹《たけ》の子《こ》の手桶《てをけ》に差《さ》しますと、それで提《さ》げられるやうに成《な》るのです。水
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