入口《いりぐち》と、入口《いりぐち》が二つになつて居《ゐ》ましたが、その臺所《だいどころ》の入口《いりぐち》から見《み》ますと、爐邊《ろばた》ではもう夕飯《ゆふはん》が始《はじ》まつて居《ゐ》ました。ところが誰《だれ》も父《とう》さんに『お入《はい》り』と言《い》ふ人《ひと》がありません。『早《はや》く御飯《ごはん》をおあがり』と言《い》つて呉《く》れる者《もの》も有《あ》りません。父《とう》さんは自分《じぶん》のしたことで、こんなに皆《みんな》を怒《おこ》らせてしまつたかと思《おも》ひました。そのうちに、
『お前《まへ》はそこに立《た》つてお出《い》で。』
といふ伯父《おぢ》さんの聲《こゑ》を聞《き》きつけました。あのお前達《まへたち》の伯父《おぢ》さんが、父《とう》さんには一番《いちばん》年長《うへ》の兄《にい》さんに當《あた》る人《ひと》です。父《とう》さんは問屋《とんや》の三|郎《らう》さんを泣《な》かせた罰《ばつ》として、庭《には》に立《た》たせられました。あか/\と燃《も》える樂《たの》しさうな爐《ろ》の火《ひ》も、みんなが夕飯《ゆふはん》を食《た》べるさまも、庭《には》の
前へ
次へ
全171ページ中85ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング