さんでした。二人《ふたり》は片足《かたあし》づゝ揚《あ》げまして、坂《さか》になつた村《むら》の往来《わうらい》を『ちんぐら、はんぐら』とよく遊《あそ》びました。
ある日《ひ》の夕方《ゆふがた》の事《こと》、父《とう》さんは何《なに》かの事《こと》で三|郎《らう》さんと爭《あらそ》ひまして、この好《よ》い遊《あそ》び友達《ともだち》を泣《な》かせてしまひました。三|郎《らう》さんの祖母《おばあ》さんといふ人《ひと》は日頃《ひごろ》三|郎《らう》さんを可愛《かあい》がつて居《ゐ》ましたから、大層《たいそう》立腹《りつぷく》して、父《とう》さんのお家《うち》へ捩《ね》じ込《こ》んで來《き》たのです。問屋《とんや》の祖母《おばあ》さんと言《い》へば、なか/\負《ま》けては居《ゐ》ない人《ひと》でしたからね。
父《とう》さんはお家《うち》へ歸《かへ》ればきつと叱《しか》られることを知《し》つて居《ゐ》ましたから、しょんぼりと門《もん》の内《なか》まで歸《かへ》つて行《い》きました。お家《うち》には廣《ひろ》い板《いた》の間《ま》の玄關《げんくわん》と、田舍風《ゐなかふう》な臺所《だいどころ》の
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