、黍《きび》に、それから豆《まめ》です。粟《あは》は粟餅《あはもち》の粟《あは》、黍《きび》はお前達《まへたち》のお馴染《なじみ》な桃太郎《もゝたらう》が腰《こし》にさげて居《ゐ》る黍團子《きびだんご》の黍《きび》です。父《とう》さんのお家《うち》の裏《うら》にも、斯《こ》のお百姓《ひやくしやう》の神樣《かみさま》が祀《まつ》つてありました。赤《あか》い鳥居《とりゐ》の奧《おく》にある小《ちひ》さな社《やしろ》がそれです。二|月《ぐわつ》初午《はつうま》の日《ひ》には、お家《うち》の爺《ぢい》やが大《おほ》きな太鼓《たいこ》を持出《もちだ》して、その社《やしろ》の側《わき》の櫻《さくら》の枝《えだ》の木《き》に掛《か》けますと、そこへ近所《きんじよ》の子供《こども》が集《あつ》まりました。父《とう》さんもその太鼓《たいこ》を叩《たゝ》くのを樂《たのし》みにしたものです。
お前達《まへたち》はあの繪馬《ゑま》を知《し》つて居《ゐ》ますか。馬《うま》の繪《ゑ》をかいた小《ちひ》さな額《がく》が諸方《はう/″\》の社《やしろ》に掛《か》けてあるのを知《し》つて居《ゐ》ますか。あの額《がく》の
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