來《き》て呉《く》れました。あの人達《ひとたち》はお前達《まへたち》の祖父《おぢい》さんのことを『お師匠《ししやう》さま、お師匠《ししやう》さま』と呼《よ》んで居《ゐ》ました。あの人達《ひとたち》が苗字《めうじ》をつける時《とき》のことを今《いま》から思《おも》ひますと、
『お師匠《ししやう》さま、孫子《まごこ》に傳《つた》はることでございますから、どうかまあ私共《わたしども》にも好《よ》ささうな苗字《めうじ》を一つお願《ねが》ひ申《まを》します。』
斯《か》うもあつたらうかと思《おも》ひます。そして、大脇《おほわき》[#ルビの「おほわき」は底本では「おはわき」]の脇《わき》の字《じ》を分《わ》けて貰《もら》ふとか、蜂谷《はちや》の谷《や》の字《じ》を分《わ》けて貰《もら》ふとかして、いろ/\な苗字《めうじ》が村《むら》にふえて行《い》つたらうかと思《おも》ひます。
二八 狐《きつね》の身上話《みのうへばなし》
お稻荷《いなり》さまは五穀《ごこく》の神《かみ》を祀《まつ》つたものですとか。五穀《ごこく》とは何《なん》と何《なん》でせう。米《こめ》に、麥《むぎ》に、粟《あは》に
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