》の居《ゐ》る木曾《きそ》の小父《をぢ》さんの家《うち》を訪《たづ》ねたことが有《あ》りましたらう。あの小父《をぢ》さんの家《うち》の前《まへ》から、木曽川《きそがは》の流《なが》れるところを見《み》て來《き》ましたらう。小父《をじ》さんの家《うち》のある木曾福島町《きそふくしままち》は御嶽山《おんたけさん》に近《ちか》いところですが、あれから木曽川《きそがは》について十|里《り》ばかりも川下《かはしも》に神坂村《みさかむら》といふ村《むら》があります。それが父《とう》さんの生《うま》れた村《むら》です。

   三 山《やま》の中《なか》へ來《く》るお正月《しやうぐわつ》

父《とう》さんも昔《むかし》はお前達《まへたち》と同《おな》じやうに、お正月《しやうぐわつ》の來《く》るのを樂《たのし》みにした子供《こども》でしたよ。
お正月《しやうぐわつ》が來《く》る時分《じぶん》になると、父《とう》さんの生《うま》れたお家《うち》では自分《じぶん》のところでお餅《もち》をつきました。そのお餅《もち》は爐邊《ろばた》につゞいた庭《には》でつきましたから、そこへ爺《ぢい》やが小屋《こや》から杵
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