だ》だけ出《だ》しまして、頭《あたま》も尻尾《しつぽ》も隱《かく》しながら日向《ひなた》ぼつこをして居《ゐ》るのを見《み》かけました。
この土藏《どざう》について石段《いしだん》を降《お》りて行《ゆ》きますと、お家《うち》の木小屋《きごや》がありました。木小屋《きごや》の前《まへ》には池《いけ》があつて石垣《いしがき》の横《よこ》に咲《さ》いて居《ゐ》る雪《ゆき》の下《した》や、そこいらに遊《あそ》んで居《ゐ》る蜂《はち》や蛙《かへる》なぞが、父《とう》さんの遊《あそ》びに行《ゆ》くのを待《ま》つて居《ゐ》ました。裏木戸《うらきど》の外《そと》へ出《で》て見《み》ますと、そこにはまたお稻荷《いなり》さまの赤《あか》い小《ちひ》さな社《やしろ》の側《そば》に大《おほ》きな栗《くり》の木《き》が立《た》つて居《ゐ》ました。風《かぜ》でも吹《ふ》いて栗《くり》の枝《えだ》の搖《ゆ》れるやうな朝《あさ》に父《とう》さんがお家《うち》から馳出《かけだ》して行《い》つて見《み》ますと『誰《たれ》も來《こ》ないうちに早《はや》くお拾《ひろ》ひ。』と栗《くり》の木《き》が言《い》つて、三つづゝ一|組《
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