しりまして、煮《に》て食《く》ふ前《まへ》に追《お》ひ廻《まは》して面白《おもしろ》がつたものです。あの赤《あか》はだかに毛《け》を拔《ぬ》かれた鳥《とり》がヒヨイ/\飛《と》び歩《ある》くのを見《み》るほど、むごいものは無《な》いと思《おも》ひました。父《とう》さんは子供心《こどもごゝろ》にも、そんな惡戲《いたづら》をする村《むら》の人達《ひとたち》を何程《なにほど》憎《にく》んだか知《し》れません。
お家《うち》の土藏《どざう》には年《とし》をとつた白《しろ》い蛇《へび》も住《す》んで居《を》りました。その蛇《へび》は土藏《どざう》の『主《ぬし》』だから、かまはずに置《お》けと言《い》つて、石《いし》一つ投《な》げつけるものもありませんでした。不思議《ふしぎ》にもその年《とし》とつた蛇《へび》は動物園《どうぶつゑん》にでも居《ゐ》るやうに温順《おとな》しくして居《ゐ》てついぞ惡戲《いたづら》をしたといふことを聞《き》きません。父《とう》さんはめつたにその蛇《へび》を見《み》ませんでしたが、どうかすると日《ひ》の映《あた》つた土藏《どざう》の石垣《いしがき》の間《あひだ》に身體《から
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