いて行《い》つて呉《く》れることもありました。
めづらしいお客《きやく》さまでもある時《とき》には、父《とう》さんのお家《いへ》[#「いへ」はママ]では鷄《にはとり》の肉《にく》を御馳走《ごちそう》しました。山家《やまが》のことですから、鷄《にはとり》の肉《にく》と言《い》へば大《たい》した御馳走《ごちそう》でした。その度《たび》にお家《いへ》に飼《か》つてある鷄《にはとり》が減《へ》りました。あの締《し》められた首《くび》を垂《た》れ眼《め》を白《しろ》くしまして、羽《はね》をむしられる鷄《にはとり》を見《み》て居《ゐ》ますと、父《とう》さんはお腹《なか》の中《なか》でハラ/\しました。これはお客《きやく》さまの御馳走《ごちそう》ですから仕方《しかた》が無《な》いと思《おも》ひましたが、近所《きんじよ》のお家《いへ》では、鬪鷄《しやも》や鷄《にはとり》を締殺《しめころ》して煮《に》て食《く》ふといふことをよくやりました。村《むら》には隨分《ずゐぶん》惡戲《いたづら》の好《す》きな人達《ひとたち》がありました。さういふ人達《ひとたち》は生《い》きて居《ゐ》る鬪鷄《しやも》の毛《け》をむ
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