もの》もお友達《ともだち》
山《やま》の中《なか》に育《そだ》つた父《とう》さんは、いろいろな木《き》をお友達《ともだち》のやうに思《おも》つて大《おほ》きくなつたばかりではありません。お前達《まへたち》の好《す》きなお伽話《とぎばなし》の本《ほん》や雜誌《ざつし》の中《なか》に出《で》て來《く》るやうな、鳥《とり》や獸《けもの》まで幼少《ちひさ》い時分《じぶん》の父《とう》さんにはお友達《ともだち》でした。
お家《うち》にはおいしい玉子《たまご》を御馳走《ごちそう》して呉《く》れる鷄《にはとり》が飼《か》つてありました。父《とう》さんが裏庭《うらには》に出《で》て、桐《きり》の木《き》の下《した》あたりを歩《ある》き廻《まは》つて居《ゐ》ますと、その邊《へん》には鷄《にはとり》も遊《あそ》んで居《ゐ》ました。
『コツ、コツ、コツ。』
と鷄《にはとり》は父《とう》さんを見《み》かける度《たび》に挨拶《あいさつ》します。時《とき》には鷄《にはとり》はお友達《ともだち》のしるしにと言《い》つて、白《しろ》い羽《はね》や茶色《ちやいろ》な羽《はね》の拔《ぬ》けたのを父《とう》さんに置《お》
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