來《き》て働《はたら》く人《ひと》もありました。好《よ》いお茶《ちや》の香《にほひ》がするのと、家中《いへぢう》でみんな働《はたら》いて居《を》るので、父《とう》さんも雀《すずめ》と一|緒《しよ》にそこいらを踊《をど》つて歩《ある》きました。
父《とう》さんのお家《うち》ではこのお茶《ちや》ばかりでなく食《た》べる物《もの》も着《き》る物《もの》も自分《じぶん》のところで造《つく》りました。お味噌《みそ》も家《うち》で造《つく》り、お醤油《しやうゆ》も家《うち》で造《つく》り、祖母《おばあ》さんや伯母《をば》さんの髮《かみ》につける油《あぶら》まで庭《には》の椿《つばき》の樹《き》の實《み》を絞《しぼ》つて造《つく》りました。林《はやし》にある小梨《こなし》の皮《かは》を取《と》つて來《き》て、黄色《きいろ》い汁《しる》で絲《いと》まで染《そ》めました。父《とう》さんの子供《こども》の時分《じぶん》には祖母《おばあ》さんの織《お》つて下《くだ》さる着物《きもの》を着《き》、爺《ぢい》やの造《つく》つて呉《く》れる草履《ざうり》をはいて、それで學校《がくかう》へ通《かよ》ひました。さうし
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