》と言《い》つて見《み》せました。そこではお家《うち》の畠《はたけ》で取《と》れたお茶《ちや》の葉《は》を煮《に》て居《ゐ》る人《ひと》があります。あの莚《むしろ》[#ルビの「むしろ」は底本では「むろ」]の上《うへ》を御覽《ごらん》と言《い》つて見《み》せました。そこではお釜《かま》から出《だ》したお茶《ちや》の葉《は》をひろげて團扇《うちは》であほいで居《ゐ》る人《ひと》があります。あの焙爐《ほいろ》の方《はう》を御覽《ごらん》と言《い》つて見《み》せました。そこでは火《ひ》の上《うへ》にかけたお茶《ちや》の葉《は》を兩手《りやうて》で揉《も》んで居《ゐ》る人《ひと》があります。
『チユウ、チユウ。』
とめづらしいことの好《す》きな雀《すずめ》が鳴《な》きました。そしてめづらしいことでさへあれば、雀《すずめ》は喜《よろこ》びました。
お家《うち》では祖母《おばあ》さんや伯母《をば》[#ルビの「をば」は底本では「おば」]さんやお雛《ひな》まで手拭《てぬぐひ》を冠《かぶ》りまして、伯父《おぢ》さんや爺《ぢい》やと一|緒《しよ》に働《はたら》きました。近所《きんぢよ》から手傳《てつだ》ひに
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