むら》の板屋根《いたやね》や、柿《かき》の木《き》や、竹籔《たけやぶ》や、窪《くぼ》い谷間《たにま》の畠《はたけ》まで、一|目《め》に見《み》えました。そこには父《とう》さんのお家《いへ》の御先祖《ごせんぞ》さま達《たち》も、紅《あか》い椿《つばき》の花《はな》なぞの咲《さ》くところで靜《しづ》かに眠《ねむ》つて居《を》りました。
一五 お茶《ちや》をつくる家《いへ》
雀《すずめ》が父《とう》さんのお家《うち》へ覗《のぞ》きに來《き》ました。丁度《ちやうど》お家《うち》ではお茶《ちや》をつくる最中《さいちう》でしたから、雀《すずめ》がめづらしさうに覗《のぞ》きに來《き》たのです。
『お前《まへ》さんのお家《うち》ではお茶《ちや》をつくるんですか。』
と雀《すずめ》が言《い》ひますから、
『えゝ、私《わたし》の家《うち》ではお茶《ちや》を買《か》つたことが有《あ》りません。毎年《まいねん》自分《じぶん》の家《うち》でつくります。』
と父《とう》さんが話《はな》してやりました。その時《とき》、父《とう》さんが雀《すずめ》に、あの大《おほ》きなお釜《かま》の方《はう》を御覽《ごらん
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