むらぢう》第《だい》一の建物《たてもの》です。こんなお住居《すまゐ》に被入《いら》しやる和尚《をしやう》さんは仕合《しあは》せな方《かた》ですね。』
斯《か》う狐《きつね》は言《い》ひました。狐《きつね》は調戯《からか》ふつもりでわざと桃林和尚《たうりんをしやう》の機嫌《きげん》を取《と》るやうにしましたが、賢《かしこ》い和尚《をしやう》さんはなか/\その手《て》に乘《の》りませんでした。
『ハイ、御覽《ごらん》の通《とほ》り、村《むら》では大《おほ》きな建物《たてもの》です。しかしこのお寺《てら》は村中《むらぢう》の人達《ひとたち》の爲《た》めにあるのです。私《わたし》はこゝに御奉公《ごほうこう》して居《ゐ》るのです。お前《まへ》さんは私《わたし》がこの住居《すまゐ》の御主人《ごしゆじん》のやうなことを言《い》ひますが私《わたし》は唯《たゞ》こゝの番人《ばんにん》です。』
斯《か》う桃林和尚《たうりんをしやう》が答《こた》へましたので、狐《きつね》は頭《あたま》を掻《か》き/\裏《うら》の林《はやし》の方《はう》へこそ/\隱《かく》れて行《ゆ》きました。
桃林和尚《たうりんをしやう》
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