は》――とても勘定《かんぢやう》することの出來《でき》ない何《なん》十|羽《ぱ》といふ燕《つばめ》が村《むら》へ着《つ》いたばかりの時《とき》には、直《す》ぐに人家《じんか》へ舞《ま》ひ降《お》りようとはしません。離《はな》れさうで離《はな》れない燕《つばめ》の群《むれ》は、細長《ほそなが》い形《かたち》になつたり、圓《まる》い輪《わ》の形《かたち》になつたりして、村《むら》の空《そら》の高《たか》いところを揃《そろ》つて舞《ま》つて居《ゐ》ます。そのうちに一|羽《は》空《そら》から舞《ま》ひ降《お》りたかと思《おも》ふと、何《なん》十|羽《ぱ》といふ燕《つばめ》が一|時《じ》に村《むら》へ降《お》りて來《き》ます。そして互《たがひ》に嬉《うれ》しさうな聲《こゑ》で鳴《な》き合《あ》つて、舊《ふる》い馴染《なじみ》の軒塲《のきば》を尋《たづ》ね顏《がほ》に、思《おも》ひ/\に分《わか》れて飛《と》んで行《ゆ》きます。父《とう》さんのお家《うち》へ飛《と》んで行《ゆ》くのもあれば、お隣《となり》の大黒屋《だいこくや》へ飛《と》んで行《ゆ》くのもあれば、そのまた一|軒《けん》置《お》いてお
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