ほ》の木《き》の葉《は》で包《つゝ》んで下《くだ》さる※[#「熱」の左上が「幸」、50−3]《あつ》い握飯《おむすび》の香《にほひ》でも嗅《か》いだ方《はう》が、お錢《あし》を出《だ》して買《か》つたお菓子《くわし》より餘程《よほど》おいしく思《おも》ひました。お家《うち》の外《そと》を歩《ある》き廻《まは》つても、石垣《いしがき》のところには黄色《きいろ》い木苺《きいちご》の實《み》が生《な》つて居《ゐ》るし、竹籔《たけやぶ》のかげの高《たか》い榎木《えのき》の下《した》には、香《かん》ばしい小《ちひ》さな實《み》が落《お》ちて居《ゐ》ました。村《むら》のはづれには「けんぽ梨《なし》」といふ木《き》もあつて、高《たか》い枝《えだ》の上《うへ》に珊瑚珠《さんごじゆ》のやうな實《み》が生《な》る時分《じぶん》には木曽路《きそぢ》を通《とほ》る旅人《たびびと》はめづらしさうに仰向《あうむ》いて見《み》て行《ゆ》きましたが、その實《み》も取《と》れば食《た》べられて甘《うま》い味《あぢ》がしました。そればかりではありません、山《やま》にある木《き》の葉《は》、田圃《たんぼ》にある草《くさ》の
前へ
次へ
全171ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング