おやどから始《はじ》めませう。
雀《すずめ》、雀《すずめ》、おやどはどこだ。
雀《すずめ》のお家《うち》は林《はやし》の奧《おく》の竹《たけ》やぶにありました。この雀《すずめ》には父《とう》さまも母《かあ》さまもありました。樂《たの》しいお家《うち》の前《まへ》は竹《たけ》ばかりで、青《あを》いまつすぐな竹《たけ》が澤山《たくさん》に竝《なら》んで生《は》えて居《ゐ》ました。雀《すずめ》は毎日《まいにち》のやうに竹《たけ》やぶに出《で》て遊《あそ》びましたが、その竹《たけ》の間《あひだ》から見《み》ると、樂《たの》しいお家《うち》がよけいに樂《たの》しく見《み》えました。
そのうちに、雀《すずめ》の好《す》きなお家《うち》の前《まへ》には竹《たけ》の子《こ》が生《は》えて來《き》ました。母《かあ》さまのお洗濯《せんたく》する方《はう》へ行《い》つて見《み》ますと、そこにも竹《たけ》の子《こ》が出《で》て來《き》てゐました。
『あそこにも竹《たけ》の子《こ》。ここにも竹《たけ》の子《こ》。』
と雀《すずめ》はチユウチユウ鳴《な》きながら、竹《たけ》の子《こ》のまはりを悦《よろこ》んで踊《
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