や竹馬《たけうま》で凍《こゞ》へた手《て》をお家《うち》の爐邊《ろばた》の火《ひ》にあぶるのも樂《たのし》みでした。
一一 庄吉爺《しやうきちぢい》さん
お前達《まへたち》は荒神《くわうじん》さまを知《し》つて居《ゐ》ませう。ほら、臺所《だいどころ》の竈《かまど》の上《うへ》に祭《まつ》る神《かみ》さまのことを荒神《くわうじん》さまと言《い》ひませう。あゝして火《ひ》を鎭《しづ》める神《かみ》さまばかりでなく、父《とう》さんの田舍《ゐなか》では種々《いろ/\》なものを祭《まつ》りました。
繭玉《まゆだま》のかたちを、しんこで造《つく》つてそれを竹《たけ》の枝《えだ》にさげて、お飼蠶《かいこ》さまを守《まも》つて下《くだ》さる神《かみ》さまをも祭《まつ》りました。病氣《びやうき》で倒《たふ》れた馬《うま》のためには、馬頭觀音《ばとうくわんおん》を祭《まつ》りました。歩《ある》いて通《とほ》る旅人《たびびと》の無事《ぶじ》を祈《いの》るためには、道祖神《だうそじん》を祭《まつ》りました。
父《とう》さんは爺《ぢい》やに連《つ》れられて、山《やま》の神《かみ》さまへお餅《もち》をあ
前へ
次へ
全171ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング