》つた坂路《さかみち》を滑《すべ》りました。この氷滑《こほりすべ》りが雪《ゆき》の日《ひ》の樂《たのし》みの一つで、父《とう》さんも爺《ぢい》やに造《つく》つて貰《もら》つた鳶口《とびぐち》を持出《もちだ》しては近所《きんじよ》の子供《こども》と一|緒《しよ》に雪《ゆき》の降《ふ》る中《なか》で遊《あそ》びました。積《つも》つた雪《ゆき》を凍《こゞ》つた土《つち》の上《うへ》に集《あつ》めて、それを下駄《げた》の齒《は》でこするうちには、白《しろ》いタヽキのやうな路《みち》が出來上《できあが》ります。鳶口《とびぐち》を手《て》にしながら坂《さか》の上《うへ》の方《はう》から滑《すべ》りますと、ツーイ/\と面白《おもしろ》いやうに身體《からだ》が行《ゆ》きました。もしか滑《すべ》り損《そこ》ねて鳶口《とびぐち》で身體《からだ》を支《さゝ》へ損《そこ》ねた塲合《ばあひ》には雪《ゆき》の中《なか》へ轉《ころ》げこみます。さういふ度《たび》に子供同志《こどもどうし》の揚《あ》げる笑《わら》ひ聲《ごゑ》を聞《き》くのも樂《たのし》みでした。自分《じぶん》の着物《きもの》についた雪《ゆき》をはらつ
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