のし》みでした。
『凧《たこ》も見物《けんぶつ》で草臥《くたび》れました。もうそろ/\降《おろ》して下《くだ》さい。』
と凧《たこ》が言《い》ふものですから、父《とう》さんが絲《いと》をたぐりますと、凧《たこ》はフハ/\フハ/\空《そら》を舞《ま》ふやうにして、田圃《たんぼ》のところまで嬉《うれ》しさうに降《お》りて來《き》ました。
九 猿羽織《さるばおり》
猿羽織《さるばおり》と言《い》つて、父《とう》さんの田舍《ゐなか》の子供《こども》は、お猿《さる》さんの着《き》る袖《そで》の無《な》い羽織《はおり》のやうなものを着《き》ました。寒《さむ》くなるとそれを着《き》ました。その猿羽織《さるばおり》を着《き》て雪《ゆき》の中《なか》を飛《と》んで歩《ある》くのは、丁度《ちやうど》木曾《きそ》の山《やま》の中《なか》のお猿《さる》さんが、雪《ゆき》の中《なか》を飛《と》んで歩《ある》くやうなものでした。
十 雪《ゆき》は踊《をど》りつゝある
父《とう》さんの田舍《ゐなか》では、何處《どこ》の家《うち》でも板《いた》で屋根《やね》を葺《ふ》いて、風《かぜ》や雪《ゆき》を
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