などを造《つく》るのは、上手《じやうず》に出來《でき》ても出來《でき》なくても、樂《たのし》みなものでせう。父《とう》さんが自分《じぶん》で凧《たこ》を造《つく》つたのは、丁度《ちやうど》お前達《まへたち》の手工《しゆこう》の樂《たのし》みでしたよ。細《ほそ》い竹《たけ》や紙《かみ》でこしらへたものが、だん/\凧の《たこ》のかたちに成《な》つて行《い》つた時《とき》は、どんなに父《とう》さんも嬉《うれ》しかつたでせう。父《とう》さんはその凧《たこ》に絲目《いとめ》をつけまして、田圃《たんぼ》の方《はう》へ持《も》つて行《ゆ》きました。
『風《かぜ》[#「風」は底本では「凧」]よ、來《こ》い、來《こ》い、凧《たこ》揚《あが》れ。』
と言《い》つて、近所《きんじよ》の子供《こども》も手造《てづく》りにした凧《たこ》を揚《あ》げに來《き》て居《ゐ》ます。田圃側《たんぼわき》の枯《か》れた草《くさ》の中《なか》には、木瓜《ぼけ》の木《き》なぞが顏《かほ》を出《だ》して居《ゐ》まして、遊《あそ》び廻《まは》るには樂《たのし》い塲所《ばしよ》でした。[#「。」は底本では「、」]
『あゝ好《よ》い風
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